「謎解きはディナーのあとで」東川篤哉

 執事とお嬢様刑事が、6つの事件を名推理!
 ミステリ界に新たなヒーロー誕生! 主人公は、国立署の新米警部である宝生麗子ですが、彼女と事件の話をするうちに真犯人を特定するのは、なんと日本初!?の安楽椅子探偵、執事の影山です。彼は、いくつもの企業を擁する世界的に有名な「宝生グループ」、宝生家のお嬢様麗子のお抱え運転手です。本当は、プロの探偵か野球選手になりたかったという影山は、謎を解明しない麗子に時に容赦ない暴言を吐きながら、事件の核心に迫っていきます。
 本格ものの謎解きを満喫でき、ユーモアたっぷりのふたりの掛け合いが楽しい連作ミステリです。

 ということで、読みました。ヒーロー…?
 軽い文体に軽妙な会話、滑るギャグにニヤニヤしながら読むミステリ。そんな感じで意外と珍しい「ユーモアミステリ」を地で行く本作なのですが、ところがどっこい、トリックもロジックたっぷりで面白かったです。読みやすいのに「本格」であるということは、ある意味ではその「軽い」語り口こそが、読者にミスリーディングを仕掛けているということもあるわけで…、ドラマよりもパズラーとしてのミステリなのですが、紛うことなき本格ミステリ

「ハッピーフライト」

 『スウィングガールズ』の矢口史靖監督が航空業界の裏側を描いた群像コメディ。
 機長昇格を目指す副操縦士・鈴木和博や新人CA・斎藤悦子らが乗るホノルル行き1980便は、定刻通りに何とか離陸するのだが…。

 厳密に言えばこの映画は全くサスペンスを意図したところではないはずだったのだけれど、なかなかどうして、サスペンスフル。本当ならば「ヒコーキ」を飛ばせる人々のとある一日、に過ぎないはずのひとコマが、モザイク形式に進むことによって、いろんな人々の意思がひとつの目的に集束する。最終的にはエンタテインメントのための職業映画になってしまってはいるのだけれど…。
 それから「結末」は分かりきっているのにハラハラしながら一緒に見守ってしまいましたよ、原田さん。

「悪夢のエレベーター」

 エレベーターに閉じ込められてしまった何だかワケあり気な男女4人。助けを呼ぶ手段のない非常事態。絶対関わりたくないメンバー同士がエレベーターに閉じ込められた。しかし、なぜかお互いの秘密を暴露しあっていくことに!?そして、閉ざされた空間の中、ある“謎”に気が付いたとき、遂に悪夢のような事件が起きる!しかし、扉の外では更なる悪夢が待ち受けていることを、誰も知る由はなかった――。

 タイトルはストレート過ぎてアレなのですが、凄く面白かった!
 とても感想を書き難い映画だと思うのですが、やはり最低限の情報だけで見るべき映画はたくさんあるのだ、ということが、この一本を見ても分かります。安易にこのお話の展開に納得することなかれ。連続ツイストでくらくらです。エンディングを観た後にも色々と考察したくなって見た人と語りたくなってしまうこと請け合い!

「シャーロック・ホームズ」

 超人的な観察力・記憶力・推理力はそのままに、熟練した武術家でもあるシャーロック・ホームズが19世紀末のロンドンを舞台に、相棒のジョン・ワトソン医師と最強の謎に挑むサスペンス・アクション!!

「ホームズといえば安楽椅子探偵(アームチェア・ディティクティヴ)のこと」なんていう思い込みを持っている人はいませんか? とんでもないです。「ああ、ミステリね」なんて思っている人ですら、その思い込みを根底からぶち壊すオープニングシークエンスから、アクションたっぷりなサスペンス満載の現代版「ホームズ」は、しかし実は原作に近い冒険譚の要素を盛り沢山に含んだエンターテインメントムービーとなっております。
 泥臭いところも多いけれど、実に些細な手掛かりから瞬時に物事の真実を探り出す、我々がよく知る(?)ホームズの鋭敏な推理能力に、固定観念と化した、あの愚鈍なまでに紳士でしかないホームズの姿は果たして真実だったのかと唸らされることしきり。色々な意味で新しい一作。

「ブラッディピエロ 100人連続切裂き」

 観ました。
 非道い。
 全編スプラッタ。もう少しでギャグになってしまうレベルのスプラッタホラー。様々なイヴェントの必然性も論理性も何もない。ストーリーなんて二の次でいいんじゃない? という見方が一番楽しめるのかも。それにしてもこの吹き替えは酷い。酷過ぎて笑えてくる。それゆえにインパクトは物凄いですね。どうしてわざとコメディにしてしまっているのだろう。配給会社の戦略なのだろうか。声優さんも、わざと棒読みにしているんでしょう、これって。酷い。面白い。国内で本作を観る場合、「吹き替え+字幕」で見ないことには面白さを堪能出来ないのではないでしょうか。
 鉈+ハンマでの「細切れ」シーンは見応えあったなあ。

「隻眼の少女」麻耶雄嵩

 古式ゆかしき装束を身にまとい、美少女探偵・御陵みかげ降臨!因習深き寒村で発生した連続殺人。名探偵だった母の跡を継ぎ、みかげは事件の捜査に乗り出した―。

 この登場人物に、この事件! 生半可なミステリでは到底辿り着けない境地を、またもや目指してしまった麻耶雄嵩流の「新本格ミステリ」を久々に読んだような気がします。とにかく、「事件を解決するために存在するのが探偵である」ということに対して、あまりに非情な存在の仕方をするのが今回の探偵役。序盤では「探偵」が前面なのか「キャラクター」が前面なのか掴みかねていましたが、中盤まではちょっと退屈、しかしラストに向けてのこの展開は色んな意味で凄い。
 丁寧に積み重ねたロジックとトリック、それらも必要なくなってしまう、恐るべき真相。こんな動機で犯罪を犯した犯人がいただろうか? 異常だ。紛れもなく「探偵=犯人」の新境地。
 読み終わって思えば、この装丁って…、もしかしたらもしかするよね? そう、表紙カバーを本体から取って広げると、「ふたりのみかげ」がいるのですよ!

「ツチヤの口車」土屋 賢二

 恐怖!!身の毛もよだつ理屈の数々!今宵もあの貧相な男が、口車に乗って貴方を誘います…。満身創痍の日々をつづった連載エッセイ。

 ということで、読みました。
 この方のエッセイは何度か読んでいるが、毎度のことながら、文句の付けようがない。
 本当に、呆れてものが言えなくなるので文句など言うことも出来なくなるのだ。
 何なのだ、このエッセイは。この人は本当にエッセイを書いているのか。
 この人の書いたものは本当にエッセイなのか。
 もしかしたら私の読んだ本はこの本ではないのではないか。だから面白かったのだ。
 それならば、この本に対して文句が出るはずもない、読んでいないのだから。
 とついつい真似をしたくなってしまう屁理屈のオンパレード。ひとりでコッソリ読む本です。
 電車とか病院の待合室とかでは、決して読んではいけません。思わぬところで吹き出してしまいます。
 学校の授業中とか、会社の企画会議中とか、病院の手術中とかは、なおいけません。
 鼻息は荒くなり、動悸は激しくなり、頭はくらくらし、よだれをたらし、叫び回ってしまうかもしれません。
 そんな危険な本を誰が勧めてまで読ませようとするでしょうか。
 そうです、この本は絶対に読んではいけません! ああ、眩暈がしてきた。